第一次ベビーブーマー(団塊世代)が30代を迎えた80年代初頭。「今までの世代とは違う洋服を身に纏いたい」という強いモチベーションから生まれた「ニューサーティー」というレディスアパレルの一群が生まれました。繊研新聞紙上でもこの言葉で紙面が賑わったことがあります。団塊世代になってから女性の社会進出が大きく進み、それに伴って働きやすく動きやすい、しかも「前の世代との違いを敢えて示したい」といった気持ちが大きくなっていったのです。折しも高度経済成長を経て、一定の豊かさを享受し、バブル経済へと突き進んでいく時代ですし、店に出せば、洋服が飛ぶように売れた時代でもありました。

また就職して数年のキャリアや経験を経て、独立しようという団塊世代の人たちも多く、原宿や代官山のマンションの一室でスタートする、所謂「マンションメーカー」と呼ばれる小さなアパレルが雨後の筍のごとく生まれます。同様に地方も含めて独立した団塊世代の専門店オーナーは、旧来の仕入れ先では飽き足らず、同世代のニューサーティーアパレルのオーナー達と意気投合し、彼らと取引を始めたのです。こうして一つの塊(まさに団塊)となって、強固なアパレルと品揃え専門店の群れ「ニューサーティー」が出来上がったのです。

彼らの大きな特徴は、完全買取、値引き返品無し、掛け率65~60%という今では絶滅危惧種のような取引条件で、バイヤーが本気でリスクを張り、アパレルも原価率の高い価値重視の服づくりに邁進した点です。

この時期に資本を蓄積した地方の専門店は、今でも団塊世代の優良顧客とその娘、孫の3世代で来店する老舗として君臨し、自社店舗や資産があるため固定費も低く抑えられ、支払いもしっかりしているのも強みでした。

とは言え、SPAや店持ちアパレルの台頭、郊外型SCの乱立と中心市街地商店街の疲弊、後継者難などの要因から、廃業する店も出てきてはいますが、淘汰と世代交代が進んでも、頑張っている品揃え専門店が各地に厳然と存在しています。

この一時代を作ってきたニューサーティーのアパレルの中から、今でも素敵な服を作り続け、専門店との確固とした絆を結んでいる会社やオーナーを連載していきたいと思います。

第1回は、シューインターナショナルの辻本修嗣さんです。<2014年2月17日掲載予定>