Berlin Wall

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新年あけましておめでとうございます。

本年もJournal Cubocciをご愛読の程、よろしくお願い申し上げます。

さて、2016年がスタートしましたが、年の瀬から年初に掛けて、やはり振り返るのは昨年の事と戦後70年のこと。

昨年の衝撃的な事件と言えば、ファッション業界に身を置く者として、そして自身にとっても「第2の故郷」といえるパリでの同時多発テロ事件の発生でした。1月の新聞社襲撃事件の際の狙いは、ターゲットが明確なものでした。しかし11月の多発テロは、無差別攻撃だった点が大きな変化と言えます。その後のIS空爆によって、更にテロの温床が広がる懸念が高まっています。負の連鎖は、どこかで断ち切らなければなりませんし、連日のように中東地域で起こっているテロの犠牲者の事にも想いをいたさなければなりません。死の商人と呼ばれる軍需産業が戦争や紛争を糧に太り、国益という名の覇権を獲り合う国家間の駆け引きと小競り合い。人類の英知とは、一体何なのか。一瞬、悲観的になってしまうこともありますが、個人レベルになるとまだまだ捨てたものじゃないと思う事が多々あります。安保関連法案に対する国会での多くの人々の行動と法案に反対する世論の多さには、一筋の光明が見てとれました。そして戦後70年の節目の年に安倍政権が一気に推し進めた政策は、日本の国民と憲法が世界に誇ってきた「平和主義」の理念を覆す危険を孕んだものでした。「積極的平和主義」という真逆の言葉を用いて。2015年という年は、そういう意味で大きな転換点の年になったのだと感ずるところです。

また経済分野でも円安によって苦しめられた1年でもありました。入超産業であるファッション業界は、その影響をもろに受け、コスト競争において苦しめられてきましたが、この点は中抜きが一層進む予兆でもあったと思います。流通構造の変化が否応も無く迫っている中で、価値のある商品・サービスを創造できるかに掛かっています。またトヨタなど輸出主導の大企業ばかりが過去最高益を出す中、安倍首相が述べていた「シャンパンタワー」はどこへ行ってしまったのでしょうか? 上のシャンパングラスが大き過ぎて、結局下にはこぼれてきていないのではないでしょうか。ここにも大きな欺瞞が隠れていましたね。今年は「1億総活躍」だそうです。兎にも角にも「もっと働け」という事でしょう。

さて今年は、どんな年になるのでしょう。パリ出張を目前に控え、身構えながらも仕事に勤しむとして、マクロな視点からは、「平和でこそファッション」の観点から日本国憲法の精神を世界に発信し、平和への道筋と対話への努力を訴え続けていきたい。

そしてミクロな視点からは、日本のクリエーターやブランドが国内外で発展できるような新たな価値創造のアイデアを出し続け、潜在的な顧客満足を高めるビジネスモデルとプラットフォームを作り上げることで、ファッション業界の発展に微々たることでも寄与していきたいと考えています。

この3月、震災から5年を迎える東北や福島にも思いを寄せつつ、オリンピックやインバウンドばかりに目を奪われないようにしながら、さまざまな活動に取り組んでいきます。

引き続き、ご愛顧の程、改めてよろしくお願い申し上げます。

2016年元旦

『Journal Cubocci』編集長 久保 雅裕