アンナとアントワーヌメイン

1950年代、フランスの映画界に新しい風を吹かせたヌーベルバーグ。そのヌーベルバーグの時代にカンヌ国際映画祭で最高賞に輝いた『男と女』の監督、クロード・ルルーシュが50年の時を経て、フランシス・レイとの名コンビ再結成による新作を発表しました。日本語タイトルは『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲(プレリュード)』。

ニューデリー~ムンバイ~ケーララへの2日間の列車旅行に出かけるアンナ(エルザ・ジルベルスタイン)とアントワーヌ(ジャン・デュジャルダン)。異国情緒たっぷりのインドを舞台に、互いにパートナーのいる男と女は惹かれあっていきます。美しい風景の中での尽きない会話で二人の距離が・・・。

映画音楽家のアントワーヌは、自分が作曲してきた映画の主人公のように、飄々とユーモアにあふれた人生を謳歌していました。そんな折り、ボリウッド版『ロミオとジュリエット』作品の制作のためにインドを訪れ、そこでフランス大使の妻、アンナと出会います。愛する夫との間に子供を授かりたいと願う彼女は、聖者アンマに会うためにインド南部の村まで巡礼の旅に出ると言います。多忙なアントワーヌもしばしの休養を求めて、アンナを追って2日間の旅に出かけることを決めますが。

『男と女』『男と女2』、そして本作にも見られるルルーシュの時が経ても褪せない世界観。それは俳優の表情、平凡な名前、シンプルなファッション、日常生活で誰にでも起こりうる身近な出来事が映像を通して伝えられています。

一方で時間が変えた彼の宇宙観とは?。『男と女』はフランス国内、『男と女2』はアフリカの砂漠、そして本作はインドへと広がるロケ地から垣間見えるルルーシュの人生哲学。「インドには生きるために生活している人たちがいる。貧しい人々が不幸を感じることなく、人生の試練として乗り越えるために生きている世界で唯一の場所。ここには『死』が存在しない。人間としての存在が永遠であることを物語っている愛すべき国。この歳になってそんな境地に近づいていることを感じる」という彼のメッセージが、さりげなくアンナのセリフに盛り込まれています。

色とりどりのインドの民族衣装に混ざって、アンナのシンプルなピンクのブラウスやさりげなく金糸の刺繍を施したインドをリスペクトした洋服がフランス女性のエレガンスを主張しています。

ストーリーの結末は、観る人の想像に任せられているシーンが、50年前の「男と女」を思い起こさせます。

9月3日よりBunkamuraル・シネマほかにて全国順次公開予定。公開に先がけて6月24日から開催されるフランス映画祭での上映も決定しています。

また10月には、懐かしい『男と女』もデジタルリマスター版でリバイバル公開が予定されています。

http://anna-movie.jp/

アンナとアントワーヌサブ1 アンナとアントワーヌサブ2