本田商店モンラッシェ

洋酒の樽に日本酒や焼酎を貯蔵し、その香りを付けて新たな付加価値を生み出そうとする試みが各地で行われています。そんな中、世界最高峰と言われるフランスの白ワイン樽を空輸し、樽熟成した日本酒を作ろうという酒蔵が兵庫県姫路市の本田商店(兵庫県姫路市・本田眞一郎社長)です。実験段階の同社を訪ねました。

本田商店

フランス・パリから南東へ300キロ。「ロマネ・コンティ」など銘醸ワインを多く産出するブルゴーニュ地方は、世界のワイン通を唸らせる傑出したものが多く、たくさんある産地の村々ごとに酒蔵巡りと試飲、購買といった一連の観光事業が「ワインツーリズム」として振興されています。

その中でも世界最高峰の白ワインを産出するモンラッシェは、ワイン愛好家垂涎の的。同じブルゴーニュ地方・サントネイ村にあるワイン蔵「ドメーヌ・フルーロ・ラローズ」は、このモンラッシェ村内の他の畑の数百倍という土地値が付くほどのグランクリュ畑を所有しています。そして、ここの2012年物を熟成してきた樽が日本に運ばれてきました。

一方、本田商店は有力品種の「山田錦」をはじめ、さまざまな米を丁寧に、時間をかけて自家精米し、純米大吟醸をはじめ各種の日本酒を生産・販売している有力酒蔵の一つですが、なかでも山田錦を35%まで精米した1升30000円(税別)という高級日本酒「米のささやき純米大吟醸・秋津」を販売していることでも世に知られています。

今回の企画は、パリで日本語のワイン雑誌『33.VIN』を発行する日仏ワイン協会が音頭を取り、フルーロ・ラローズと本田商店(販売元・Jリカー)による3社共同事業としての挑戦です。

さて、その100リットルは入るだろう樽に昨年12月、まずは兵庫県産の「神力」という米を使った日本酒を3升(5.4リットル)入れ、2ヶ月ほど寝かせてみました。そして2月初旬、一部をビンへ移して試飲と相成ったのです。

ここで一番恐れられるのが、傷んでしまうこと。日本酒を貯蔵する杉樽などは通常、「湯振り」という樽内の灰汁取りと殺菌の作業を行いますが、今回は白ワインの香りを残す必要があり、湯振りをせずに直接日本酒を入れたからなのです。

実際に飲んでみたところ、香りは白ワインそのもの。そしてワインの酸味が出ていることも判明しました。これは樽から染み出るワイン成分やモンラッシェ独特の葡萄の強さによるものと推測されました。但し、酒そのものが傷んでいなかったことは、次のステップへの大きな一歩となりました。

これから製品化へ向けて一旦酒で樽内を洗い、その後日本酒を満量詰め、1ヶ月に1度ずつ試飲テストを行いながら、1回目と2回目の貯蔵分をブレンドするなどの試作も重ねつつ、今年中に4合瓶(720ミリリットル)を120~130本出荷したいとしています。

また同社では、フランスのように酒蔵を見せて、土産に買ってもらうというワインツーリズムに倣って、2~3月には訪問を受け付けていますが、「フランスでは簡単に見てもらう程度でもたくさんの人が訪れます。一般の人は、酒蔵や作っている姿など、ちょっとしたことでも見たことが無くて興味深いもの。あちらこちらの蔵でもやるようになれば観光資源になってくる」(本田社長)と同業者にも働きかけています。

世界最高峰の白ワイン、モンラッシェの香りが付いた日本酒。日本酒党にとってもワイン通にとっても待ち遠しい日仏コラボレーションの成果が楽しみです。(33VIN東京支局長)

http://www.taturiki.com

http://www.33vin.net

日本酒に適したコメの種類

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自家精米が大切になる

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製麹室

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いよいよ試飲。もともとの日本酒と樽貯蔵した日本酒を飲み比べる

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本田社長

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