(C)Quad - Ten Films - Gaumont - TF1 Films Productions - Korokoro

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「カルト・セジュール(通称・セジュール=滞在許可証)」。パリに住む外国人にとって、何とも重く切ない響きのこの言葉。更新の成否に一喜一憂し、10年カードが取れると自慢したくなる。そんな魔物がこのカードには潜んでいます。日本人ですら、そうなのですから、黒人やアラブ人は、もっと苦労しているようです。「13区には100歳を過ぎた中国人がたくさん居る」などと、まことしやかに囁かれ、殺人事件が一番少ない区(死んでも別の不法滞在者にセジュールを譲っていくから)などと揶揄されています。

さて本作『サンバ』は『最強のふたり』のエリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ監督と主演俳優のオマール・シーがタッグを組んで作られた最新作です。前作では金持ちだが四肢が不自由なブルジョア老人と屈強だが貧しい黒人の介護担当者という、相反する二つのキャラクターがぶつかり合いながらも友情を深めていく物語でしたが、本作でも全く境遇の相反する二人の交歓を軸に展開していきます。

コック見習いのオマール演ずるサンバは、セネガルからやってきて10年ほどパリに住みながら、実家へ送金する青年。やっと料理人への道が開けて、晴れてセジュールを取れる事になっていたのですが、わずかな時間のズレで、たちまち不法滞在者へと転落してしまいます。彼を担当した移民支援協会のボランティアはシャルロット・ゲンズブール演じるアリス。彼女は大手企業で苛烈なビジネス競争社会に揉まれ、燃え尽き症候群を患って休職。そのリハビリを兼ねた活動が移民支援ボランティアだったのです。支援すべきサンバの笑顔から、逆に笑顔を取り戻させてもらったアリスは、徐々に彼に惹かれていくのですが。

ラストシーンでは、ドキリとした不法滞在者がたくさん居るのではないでしょうか。それは誰かになりすました別の人間が、たくさん住んでいるという現実が垣間見える一瞬だからです。そんな重たい空気も吹き飛ばすくらい痛快なコメディーでもあるところに「最強」と言われる所以があるのかもしれません。

10月23~31日に六本木ヒルズとTOHOシネマズ日本橋を中心に開かれた「第27回東京国際映画祭」でもラインナップされ、注目された本作は12月26日からTOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー予定です。

http://samba.gaga.ne.jp

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