グレンソン本人

英国の主要靴産地、ノーザンプトンで1866年創業の「GRENSON(グレンソン)」。近年、産地内の有力メーカーも構造不況の中、外資に買収されるなど苦境が続いていましたが、伝統的なグッドイヤーウエルト製法の工場として君臨してきたグレンソンも、いくつかの経営を経て2010年、05年から改革の先頭に立ってきたTim Little(ティム・リトル)さんが自ら経営権を取得。モダナイズすることによって見事に甦らせ、現在に至っています。ティムさんに話を聞きました。

 なぜグレンソンにテコ入れを?

私はもともと広告業界の人間で、「ティンバーランド」や「アディダス」などカジュアルシューズを担当していたのですが、それらの製造プロセスには、あまり魅力を感じていませんでした。しかしノーザンプトンの工場に行ってみるとグレンソンにはその製造過程に魅力を感じたのです。

05年にクリエーティブディレクターとして入社し、5年間かけて膿みを出してきました。もともと持っている技術やノウハウには素晴らしいものがあり、そこに惚れ込みましたから。ただマニュファクチャラーという工場としての在り方はあっても、モダンな考え方は持っていませんでした。そこにモダナイズという発想を加えて、段々上がっていくと感じ取れたのです。

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モダナイズするとは?

シンプルで本物の地に足がついた靴作りを誠実に行いつつ、見せかけのデコレーションではなく、削ぎ落としてミニマルにしていくことが、大切だと考えています。素材を追求したロンドンのレストランが受け入れられているのと同じ事です。

例えば、イーストロンドンの若者の間で60~70年代のシューズが流行っていますが、一つはビンテージに見えることがファッションの要素になっているという点、もう一つは地に足のついた方向性、つまり本物指向に魅かれているという点だと思います。

80年前のウイングチップパターンだけど、スニーカーソールにすることで素材はモダンになる。あるいはクラシックな靴だけどソールのサイドを手塗りすることでモダンに感じるなど様々なアプローチがあります。ただ付け足すことは簡単なことなのですが、むしろ、どういうタイミングでモダンに感じるかが重要な視点だと考えています。

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今後の展開は?

5~10年という長いタームではなく、その時に良いと思った事はすぐにやっていきたいと思っています。ロンドンに直営店を続々オープンさせていますし、レディスやバッグなども始めました。またNYの「フリーマンズ・スポーティング・クラブ」ではポップアップショップをやっています。日本のフリーマンズでも実施したいですね。彼らとは考え方をシェアできるので。それから6人の有望な英国のデザイナーとのコラボモデルを作ります。ご期待ください。

 http://www.grenson.co.uk

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