フフイユの店内

フフイユの店内

知る人ぞ知るアルベロベロ

「すべてのお客を笑顔に」をモットーにブランドを育ててきた羽根久美子さんと沢田尤美さん。二人が運営するのがALBEROBELLO(アルベロベロ)。ブランド名は逆さまに呼んだ「olleborebla(オレボレブラ)」。なんともふざけたようなブランド名ですが、本当にふざけたもの??を作っています。そんな彼女たちは、ニューサーティー世代のひとつ下の世代、1954年生まれです。しかし取引先の塊は、まさにニューサーティーそのもので妹分のように育てられてきました。もっとも他のアパレルメーカーとの付き合いはほとんど無く、取引先の小売店からの情報でした。

 

左が沢田さん、右が羽根さん

左が沢田さん、右が羽根さん

装苑賞、ハイファッション大賞が転機に

さて、高校時代からの同級生で大の仲良しだった二人は、進学とともにそれぞれの道を歩み始めます。

羽根さんは、美術教師に絵の才能を認められて、芸大への進学を強く推されます。「毎日100枚のデッサンを描きなさい」と指導されるものの、ファッション好きの性分には抗えず、家庭科教師の薦めで文化服装学院(文化)デザイン科へ。

一方の沢田さんは華道、茶道にピアノも習うほどの「箱入り娘的」家庭環境だったこともあり、本当は行きたかった文化は諦め、フェリス女学院短大へと進学しますが、卒後、羽根さんの後を追うように文化の服装産業科に入学します。

羽根さんの才能は文化時代にも如何なく発揮され、装苑賞を受賞しブラザーミシンをゲット。卒業時に提出したハイファッション大賞が卒業後1年経った本選会で大賞(副賞はパリ往復航空券)を受賞しました。この頃すでにローマ岩島(当時のプレタアパレル)に就職していた羽根さんは、折角の機会とハイファッション大賞事務局に「航空券でなく現金でください」と直談判。直後にローマ岩島を辞め、トレンドマップ作成のアルバイトなどをして、賞金と合わせて遊学するための資金を貯蓄し始めます。

同時期、沢田さんは、親に「フランス語の勉強がしたい」と懇願。「羽根さんが一緒に行くから安心、3ヶ月だけだから」と説得に掛かります。

こうして二人の欧州珍道中が始まります。

 発想の原点を作った大切な時期

パリに着いた二人は、まずはフランス語学校のアリアンスへ入学。しかし馴染めずに、10日間で退学。縁があってポンピドゥーセンター建設に関わった建築家、成瀨弘さん宅に居候することになります。これが彼女たちの人生を大きく変えるきっかけになったようです。

ピガールにあるこの家には様々な著名人が出入りし、彼女たちにカルチャーショックを与えます。画家のヒロ・ヤマガタ、舞踏家のマース・カニンガム、前衛音楽家のジョン・ケージなどそうそうたるメンバーばかり。そんな人々とある時は、「ワインの栓が落ちる音」について、朝まで議論している様を横で聞いていたり、ある時には8ミリ映画を作ってみたりとエキサイティングな生活を送ったようです。

この時に「こうあるべき」という先入観や経験値を自身の中から省ける心を持つことの大切さを感じたそうです。

吸収力旺盛なふたり

アルベロベロ昔城 アルベロベロ昔海

そうこうしながら、地中海沿いにバックパックの旅をしたりとフランス生活を満喫し、お金が無くなりそうになると、「トキオ・クマガイ」のアトリエで前田徳子さんと一緒にパターン引きのアルバイトをしたり、ドイツ・ハンブルグの長谷川豊さんのショーピースの服とアクセサリー作りをしたりして稼いでいたそうです。

沢田さんは親に3ヶ月と言ったにもかかわらずズルズルと1年間に引き延ばして帰国。羽根さんはもう1年を過ごし、インドなどでもアパレルデザインの仕事を経験するなどして、ニューヨークで1ヶ月滞在後、帰国の途に就きました。

 アパレルメーカーとして立つ

こんな特別な経験をした二人は、従来のファッション業界のシステムとは違うところで挑戦していきたいと思うようになります。80年頃から地元の横浜で、洗濯機で染めたTシャツに刺しゅうなどを施した商品を展示販売したり、主に羽根さんがデザイン画を起こし、沢田さんがプリントを作るなどしてアパレルをスタートさせます。

そんな中、西武百貨店のバイヤーが来訪。自主編集売場「カプセル」に入ることに。しかし普通の発想に飽き足らない二人は、伊勢佐木町の本屋「有隣堂」に飛び込み営業に行きます。

海外で身に付いた「発想を変えることで違うものが見えてくる」というスタンスから「本屋に服があってもいいじゃない?」と飛び込んでみたものの「フィッティングルームが作れないから」と断られたそうです。

 

アルベロベロの初期の展示会

アルベロベロの初期の展示会

楽しい気持ちになれる服が私たちの使命

他所にない会社と商品を作っていこうと81年に法人登記し、40~50型程度で展示会をスタート。着実に専門店からの支持を広げ、今は代官山の「アルクイッポ」と表参道の「フフイユ」の2つの直営店を運営し、卸先専門店100件を維持しています。

最後に二人は「専門店オーナーは、うちの役割をよく分かっていると思います。売り場が元気になるとか、人目を引くとか。そしてあらゆる物には役割がありますが、洋服の役割は、人を格好良くさせたいという事ではなく、着たら楽しい気持ちになれるという事だと思います。そこだけはぶれてないんです。」と力強く語ってくれました。

 <information>

4月26日から1ヶ月間、「フフイユ」では、社員全員が参加して廃材や残反を再利用した商品を販売するそうです。アルベロベロらしいキッチュでユニークな物が見られそうです。

港区北青山3-12-13 HOLON L1F

TEL 03-6427-3121

http://www.foufouille.net

http://www.alberobello.co.jp

 

フフイユの店内

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